【書評】「コンサルタントの危ない流儀 集金マシーンの赤裸々な内幕を語る」デイヴィド・クレイグ(日経BP社)¥2,310

経営コンサルタントが、クライアントをいかにその気にさせて、プロジェクトを買わせるのか。本書では、著者が実際に行ったり、目にした生々しい実例を元にコンサルタントのそのやり口が、赤裸々に書かれている。

タイトルこそ「危ない流儀」となっていますが、本書で書かれている内容は、その捉え方こそ違えど、コンサルタントの一般的なセールスプロセスとして、非常に参考になる内容です。

コンサルタントがクライアントに課題意識を持たせる秘訣

例えば、コンサルタントのセールスでは、いきなりの提案からは入らない。業務改善や人員削減、サプライチェーン、ITシステム、組織構造改革などでも、まずは調査やヒアリングから入ります。本書では「DILO(Day in the Life Of」一日クライアントの部署に入り込んで、運営の問題点をあぶり出したり、「ブラウンペーパー」と言う従業員巻き込み型で、従業員に現状のプロセスの問題点を書かせ、貼りだすという、いたって原始的な手法ですが、課題が見えているのに、何もしないわけにはいかない空気を作るには十分。

調査の結果を、プロジェクトが売れるように操作するのが、まさに「危ない流儀」なのですが、それは捉え方。大抵、どんな企業にも課題はあるもので、それを誇大したり、婉曲して伝えたりして、いかにコンサルティングプロジェクトを買うことで、成果が出るのかを提案するわけです。

実践的で参考になる、実は泥臭いコンサルタントの営業

また、営業プロセスとしては基本的ではありますが、提案の過程で、クライアントとの関係性の構築にも触れています。キーマンを見つけ、キーマンにどんな言葉が響くのか、またタブーなのかを事前にしっかり把握しておくことなど、表現こそ皮肉めいてますが、参考になるものも多いです。

また、本書ではコンサルティングの歴史についても学ぶことが出来ます。「解体屋」と呼ばれる時代から、監査法人のコンサルティング部門の分離、ITシステムとの融合など。

書き方はセンセーショナルな表現も多いですが、経営コンサルタントを目指されている方には、業界の裏側・実態を知る上で参考になりますし、経営コンサルタントの方には実践的に使える内容もあります。またはコンサルティングを依頼されている企業担当者の方は、コンサルタントの提案を見極めるうえで参考になるかと思います。

コンサルタントの危ない流儀 集金マシーンの赤裸々な内幕を語る
コンサルタントの危ない流儀 集金マシーンの赤裸々な内幕を語る デイヴィド・クレイグ 松田和也

日経BP社  2007-03-09
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starある意味コンサルにとって必要なアプローチ
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starコンサル業界興亡史

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上述の通りですが、本書では「危ない流儀」というセンセーショナルなタイトルですが、本書で紹介されているような流儀は実際にほとんどのコンサルティング会社でも今でも採用しているところがあると思います。

企業の変革にはクライアントの課題認識が必須

コンサルティングにあたっては、クライアントは当然これまでのやり方を大きく変える必要が出てきます。いわば企業の変革を行っていく必要があるのですが、どんな組織でも、既存のやり方を変えるのには大きな抵抗があります。これはコンサルティングに限らず、自社内で変革を行っていく経営者・リーダーの方にとっても同様です。

そのためには、まずは課題をしっかりと認識しなければいけない。往々にして、企業は自社の課題に気づいているように見えて、気づかないフリをしていることが多々あります。それは気づいていても自分たちでは変えられないとわかっているから。コンサルタントは、まさにその痛い部分をつくわけです。

「相手の弱みにつけこんで」と思われるかも知れませんが、最終的にはクライアントに成果をもたらすことが前提となっているので、決してあくどい商売だとは思いませんが、そのアプローチは捉え方からすれば確かに「危ない」のかも知れません。

企業コンサルティングのセールスをダイエットのセールスに例えると

身近な例に例えてみれば、ちょっと体がふくよかな人をターゲットとしてみます。その人はダイエットをしなくてはと思いながら、これまでに何度か試みてはみたものの、長続きもせず成果も出せていません。しかし、本人としては体型に悩みを抱えており、なんとかして痩せられればと思っていますが、これまでの食習慣を変えたり、新しくスポーツをしたりすることには抵抗があって出来ません。

そこにコンサルタントの登場です。その人が平均的な体重よりどれだけ太っているかを認識させます。そのために同年代の人間の水着姿と、その当人の水着姿を比較出来るように見せるかも知れません。そして、これはあくどい方法ですが、より太って見えるように当人には膨張色の水着を着せたり、場合によっては画像編集を行うかも知れません。

さらに、太っていることでこれまでの人生で失ったであろう機会や、費やしたコスト、デメリットを挙げ、さらに今後このままでいることの病的なリスクなども伝えて、今の現状に対する危機意識を醸成します。ここまでして、当人もいやがおうにもダイエットを実行せずにはいられない状況を作りだします。

その上で、このサプリメントを飲めば、このスポーツ器具を使えば、このダイエット食品を使えば、この壷を買えば、などのダイエット商材を絡めて提案するのが、戦略といっしょにシステムも売るシステムコンサルのやり口です。もちろん、ここで売り逃げするコンサルも多かったのでしょうが、やはりそれだけでは成果が出ないため、実行段階まで支援する、成果が出るまで支援するとうたうコンサルティングファームが増えています。

ここの例で言えば、彼女の食事管理はもちろん、スポーツ・エクササイズのプランニングと実行管理、モチベーション維持のためのコーチングなども含めて提案を行うでしょう。こうしてダイエットプロジェクトのコンサルティング契約を結び、ダイエットを行います。(今で言うとライ◯ップみたいなところでしょうか)

危機意識の醸成の部分にポイントがあります。問題点をことさら強調するなどして、課題へ取り組まざるを得ない状況を作る。これがひとつコンサルティングのセールスの要点ではないでしょうか。

このダイエットプロジェクトのセールスはさらに続きます。

ダイエットに一定の効果が出れば、彼女も満足するわけですが、それで終わってしまってはコンサルタントは不要になってしまいます。次に彼女がどんな課題を抱えるのか、課題を作り出して行く必要があるわけです。当然、彼女のダイエットを邪魔したりなどの課題は問題外ですが、どんな人間にも、企業にも課題は存在します。

ダイエットが出来たら、次は恋人が欲しいとなるかも知れません。その場合は、自身を磨くコンサルティングプロジェクトを提案しても良いでしょうし、ダイエットで多少無理をしてしまいお肌が荒れてしまったら、お肌の再生を提案しても良い。これまで着てた服が似合わなくなってきたので、新しい服のコーディネートコンサルティングも良いかも知れません。

この様な感じで、継続してコンサルティング契約を獲得し、クライアントがお金を払える限り絞り取っていく。企業においては、プロジェクトの最終成果は本質的には利益に結びついてくるものなので、このサイクルが延々と回っていくわけです。

コンサルタントは一見知的でスマートなプロフェッショナルなイメージがあるかと思いますが、本書に紹介されているようなセールスの部分というのが、実は非常に重要で、最終的にコンサルタントとして成功できるかどうかは、ここが出来るかどうかであると思います。高い分析力、鋭い提案、速い思考力なども基本的な素養としては求められますが、成果として求められるのは「売上げ」です。本書はその「売上げ」を上げるコツが紹介されている、稀有な本だと思います。

 


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