【書評】「ある広告人の告白[新版]」デイヴィッド・オグルヴィ

本書は世界的広告会社オグルヴィ&メイザーの創業者デイヴィッド・オグルヴィの書いた、広告業界に携わる人には必読の書と呼ばれる本です。

今なお広告業界人・マーケター必読書と呼ばれる本書

本書はテレビが大々的に普及する間近の1964年に書かれたものの新版ではありますが、その内容は普遍的なものも多く、今なお有益な情報が多く含まれています。それは、つまるところ、広告・コミュニケーションが人間・消費者の行動原理に沿ったものであり、それらは大きくは変わっていないことを表しているのではないでしょうか。

また、本書のテーマが、広告人としての「在り方」を軸としていることが今なお古臭さを感じさせない理由なのかと思います。広告会社側、またクライアント側としての広告会社との理想的な関係性についても言及しています。

依然として日本の広告業界においては、コミッション制(手数料制)が大勢を占めているようですが、本書では既にコミッション制が時代遅れのものであり、フィー制への移行を広告会社・クライアントへ強く勧めるものとなっており、このあたりもまだまだ日本においては新鮮にうつるのかも知れません。

業界を作り上げた偉人が示した「広告人としてのあるべき姿」とは

本書は、オグルヴィの過去の自慢話も少し鼻につくところはありますが、それを差し引いても、「クライアント獲得の秘訣」「クライアントとの関係維持」「クライアントに贈る15のルール」などは、広告会社を経営する上で、多くの会社で参考にされているのではないかと思います。

また、特に個人的に参考になったのは「一流の広告人への道案内」。優れたAE(アカウントエグゼクティブ)所謂、クライアント担当の営業職になるための10のアドバイスなどはユーモアの効いたものですが、リアルにためになりそうです。

広告業界に関わる人にとってはもちろん、これから広告業界を目指される方も、これからの広告会社の在り方を予見したような本書は、やはりこれからも必読の書と言えるのではないでしょうか。

ある広告人の告白[新版]
ある広告人の告白[新版]デイヴィッド・オグルヴィ 山内 あゆ子

海と月社  2006-06-15
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本書には、様々な格言がまとめられており、シンプルでありながら、強力なものが多いと感じました。その中からいくつか、紹介しておきたいと思います。

「私は売る、そうでなければ存在価値がない」
「人を退屈させておいて商品を買わせることはできない。興味を持たせて初めて買ってもらうことが出来る」
「家族に見せたくないような広告は打つな」

また、著者オグルヴィはコピーライター出身ということもあるのかも知れないですが、ダイレクトレスポンスへの評価が高い。芸術的な広告を作ることでなく、「売れる広告」を作ることをとても大事にしており、このあたりもとても実践的なアドバイスが含まれています。以下は、彼が遺言として挙げたものの一部。

  • 成功する広告を作るのは技術である。(略)レジ際で穏当に効果を発揮するのがどういうテクニックかを知っているなら、あなたは間違いなく成功する。
  • ものを売る代わりに人を楽しませたい、という誘惑は疫病だ。
  • 広告を書く前に、その商品について知ることは必ず役に立つ。
  • 雑誌の編集者は、広告屋よりもコミュニケーションがうまい。彼らのテクニックをまねるべし。
  • キャンペーンのほとんどは複雑すぎる。目標がいくつもあり、何人もの重役たちの異なる意見をなんとか擦り合わせようとしているからだ。あまりにも多くのこを実現しようとすると、結局は何もできない。
  • 女性向け商品の広告を男性に書かせるな。
  • よいキャンペーンは、長年にわたってセールス力を落とさずに使い続けることが出来る。

広告業界以外の人間からすれば、当然だとも思えることのように思いますが、これだけ新しいことをやっていそうな広告業界においても、特有の業界文化があります。

メディアのコミッションに依存する日本独自の商習慣とその弊害

実際に、大手総合広告代理店で働いていた人間から見ても、そこ働くクリエイティブの人間の中には、クライアントの商品が「売る」「売れる」ことに対する執着があまり強くなかったり、コミュニケーションをプランするプランナーはまだしも、最終的なメディアプランに落とし込む時に、やはりコミッション(手数料制)を維持しているような代理店・クライアントとの関係性においては、手数料の取れるコミュニケーション企画、つまりはTVCMなどしか手掛けなくなります。

結果、今大手の代理店が苦労しているのが、Web関連のコミュニケーション。様々なグループ会社などを擁して、人材の確保に動いてはいるものの、手数料ビジネスとはビジネスモデルが異なるため、うまく融合しきれていない感があります。

その点で、本書のオグルヴィ&メイザーは、米国でもいち早くフィー制度への移行を行っており、作業量に対する費用請求を行う契約での広告を請け負っています。日本国内においては、未だにコミッション制が幅を利かせているようですが、一部ではすでに移行も始まっているようです。

グローバルスタンダードへ移行しつつある広告主側との乖離

広告業界は、日本のGDPに連動してほぼ成長してきた経緯があります。しかし、ここ十数年、日本国内のGDPの伸びはほとんどなく、それに伴い、広告業界の市場規模も大きくは伸びていません。そもそも、日本企業自体が、国内の投資から、海外への投資へと振り向けるなか、やはり広告代理店においても、グローバルでのサポートを行っていくことが求められるわけですが、その力がまだまだ足りていない状況です。

代理業からマーケティングプロフェッショナルとしてのコンサルティングサービス

これは個人的な見解ですが、やはり広告代理店は、単なる代理業から、マーケティングプロフェッショナルとしてのコンサルティングまで含めたサービス提供が求められてくるのではないかと思います。右から左にものを流して手数料を稼ぐようなビジネスではなく、コミュニケーション領域に留まらない、マーケティング支援を行っていくべきではないかと。

一方で、TAGBOATや佐藤可士和など、クリエイティブエージェンシーのように、アイデアを持つ個人や企業と、媒体を提供する代理店と、二極化していくことも考えられます。どちらの立場に立てるのか。両方を持つことが出来るのか。

グローバルではTwitterやFacebookなど、コミュニケーションインフラを作り、媒体を作り出すビジネスも盛んです。こうした領域でもパワーを発揮していけるのか。

広告ビジネスが転換期にある時、本書のような原点に立ち返ってみるのも良いかも知れません。

その他、広告業界の行く末や課題を知るのにお勧めの本を以下に挙げておきます。

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