【書評】「続ける技術」石田淳(フォレスト出版)

書評

本書は、何事も3日坊主で終わってしまう、何かを始めようと思っても、すぐ出来なくなってしまう、そんな方のために、なぜ続けることが出来ないのか、どうすれば続けることが出来るのか、誰にでも続けることが出来るようにするにはどうしたら良いのか、「行動科学」に基づいた、非常に論理的に書かれています。

続かない理由を論理的に潰していく

続かない理由には2つあるといいます。
1.やり方がわからない
2.やり方はわかっているが、「継続の仕方」がわからない

1については、○○ダイエット法や、○○勉強法、参考書など、さまざまな本が出版されていますが、一方で2については、われわれは何も知らずに、何かを始めようとすることが多いのではないかと思います。

本書ではこの「継続の仕方」に焦点をあてて解説しています。継続が出来るかどうかは、「意志」の問題ではなく、「行動に焦点」を当てることが重要であると説きます。具体的には、われわれが何かを継続して行おうという時、以下の二つのパターンに分類されます。

A.ある行動を増やす(勉強時間を増やす、運動量を増やす等)
B.ある行動を減らす(テレビ視聴時間を減らす、タバコを止める、お酒を減らす等)

この「ある行動」を「ターゲット行動」と呼びます。このターゲット行動が、不足している(不足行動)のか、余計だから減らしたい(過剰行動)のかを明確にすることからスタートします。

この「不足行動」を増やせない理由は、「すぐに成果を確認できないこと」また、「ライバル行動」と呼ばれる他の誘惑です。ダイエットをしようとしているのに、お菓子を食べてしまったり、勉強しているのにケータイをいじってしまったり、これらは簡単に成果を確認することが出来るため、とても魅力的な誘惑であり、これに負けてしまいます。

一方「過剰行動」が減らない理由は、「自分で格別の努力をしなくても、簡単に継続できてしまう」からです。この過剰行動は、簡単に快感やメリットを感じることが出来てしまうため、やめることが出来ません。

行動をコントロールするための条件を整えることから始める

こうした行動科学の基本を抑えた上で、継続するための条件を整える方法を紹介しています。そのための条件とは、「ターゲット行動の発生をコントロールする」「ターゲット行動を邪魔するライバル行動の発生をコントロールする」の2点です。

人の行動にはすべてある条件のもとで行われます。その条件をコントロールすることで、行動をコントロールするわけです。

具体的には、「フロント行動リサーチ」では、「その行動はいつ起きやすいのか」「どこで起きやすいのか」「誰が原因で起きやすいのか」を分析します。「アフター行動リサーチ」では、「その行動によって何を得ることが出来るのか」「その行動によって何が変わるのか」「その行動のあと、周囲の人がどのような反応をとるのか」を分析します。

これを踏まえ、「不足行動」を増やしたいのであれば、そのための条件をコントロールします。たとえば、ジョギングを続けたいのであれば、ウェアを着やすい所にかけておく、持ち運ぶなどが考えられます。こうして、「行動のヘルプ(補助)を作る」、さらに行った後への自分へのご褒美・メリットを考え「動機付け条件を作る(確立操作)」、加えて、ライバル行動が起こらないよう、勉強机に漫画を置かないなどの環境を整え「行動のハードルの高さを調整する(反応努力)」ことが重要です。「過剰行動」を減らす場合はこの逆です。

・ターゲット行動をコントロールする
・ライバル行動をコントロールする

「意思」ではなく「行動」にフォーカスする

この二つの法則を守り、「行動に焦点をあてることで」誰にでも100%続けることが可能であると著者はいいます。続けるためのステップは次のとおりです。

  1. 継続すべきかどうか決定する(目的を明確化する)
  2. どの行動をターゲットにしたいか
  3. ゴールを設定し周りに公開する(ゴールはラストゴールと短期的なスモールゴールを、計数化することが望ましい)
  4. メジャーメント(計測・測定を行う。目標と結果を数値化。期限も設定する)
  5. チェックする(ターゲット行動・ライバル行動の増減を確認する)

ほかにも続けるためのちょっとしたコツや、具体例として、ダイエットや英会話の勉強、禁煙、家庭内の掃除などのプライベートな事象を取り上げ、非常にわかりやすく書かれています。

数々の自己啓発書などでも同様のことを言われていますが、続けるための第一歩「継続すべきかどうか」を決めることが実は一番難しい。何事も始めの第一歩にはエネルギーが必要です。本書は、そんな第一歩を一歩で終わらせない術が書かれています。

ダイエットや禁煙、勉強、家事・掃除など、今までどうしても続けようと思っても続けることが出来なかった方へ、「意志」などの抽象論ではなく、行動科学に基づいた本書を読んで、続けてみられることをおすすめします。

かく言う自分も3日坊主で終わることが多いです。ジョギングや勉強、このブログにしても、定期的に更新することが出来ておりません。

確かに、本書で紹介されている方法はとても実践的であり、かつきちんと実行出来れば、確実に効果を出せると思われます。しかし、続けられない理由の「続け方がわからない」というよりもむしろ、やはりその第一歩である、「継続すべきかどうか」をきちんと自分の中で、腹落ちさせることが出来ていないからではないかと思います。

やみくもに始めるのではなく、最初の覚悟を捉えること

本書でも続けるための第一ステップとして上げられていますが、本当にあなたはダイエットしたいのですか?本当にあなたは英語を身につけたいと考えているのですか?と問われた時、答えられるのかどうか。ここがもっとも重要であり、ここが決まっていなければ、その後の行動のコントロールも、なし崩し的に出来なくなってしまうでしょうし、そもそも、あきらめてしまう方も多いのではないでしょうか。

たとえば、本書のステップに従い、ダイエットをしようと考えた時、「不足行動」である、運動を増やすために「毎日3km走る」ことを掲げ、過剰行動を減らすため「夜8時以降は一切食べない」などの行動目標を定めたとします。これらの行動を続ければ、確実に成果が出るとわかっていたとしても、「これは続けられないだろうなぁ」と思って、あきらめてしまう。

一方でなんとなく、ダイエットをしようと思って、とりあえずジョギングを始める。週1の時もあれば、1kmしか走らない時もある。これなら、もしかしたら続けられるかも知れませんが、おそらく成果は出ないでしょう。

本気で、その目的を見据えたとき、あなたの覚悟が試されていると考えられます。その結果、あきらめる事になっても、それはそれで一歩前進したと言えると思います。無意味なダイエットに時間を費やすよりも、ほかにもっと、あなたが本当に価値があると感じられることに時間を投資することが出来るのではないでしょうか。

本書「続ける技術」はある意味で、「やめる技術」でもあると思います。企業経営においても、「選択と集中」が必要なように、人間の人生という限られた資源を有効に活用するためにも、優先順位を考えた上で、行動をコントロールすることが重要です。

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