【不況期における転職活動】1.転職市場を知る

キャリア・転職

転職をするにあたって、自身という商品を売りに出すための労働市場・転職市場についてしっかりとした理解を持っておくことが重要です。企業の経営戦略、マーケティング戦略においても、市場をどう捉えるかによって取るべき戦略が変わるように、労働市場・転職市場の捉え方によって、求職する我々の取るべき戦略が変わってきます

景気の良い時なら、企業側の採用意欲も高く、求人数も多く「売り手市場」で労働者側に選択権があります。

しかし、現在のような不景気の時期においては、企業側は採用を絞っており、求人件数が少なく「買い手市場」であり企業側が強い交渉力を持っていると言えます。また、単に求人が少ないだけではなく、整理解雇、早期退職制度による退職者も多く、ライバルとなる求職者数も多いということも重要な視点です。

転職市場を定量的に把握するために抑えておきたい2つの数字

こうした定性的な情報は、ニュース・情報、口コミなどでも分かっているかと思いますが、具体的に数値で見ることで、理解が深まることもあります。実際に抑えるべき数字を見ていきましょう。

■有効求人倍率 (求人件数/求職者数) wiki=有効求人倍率

厚生労働省:一般職業紹介状況(職業安定業務統計)

厚生労働省が毎月発表している指標。雇用に関する数値として良く使われる指標なので、ニュースなどでも報じられます。求職者(仕事を探している人)1人あたり何件の求人があるかを示すもの。1倍以上であれば、求人件数が求職者数より多いという状況です。

ちなみに、僕が転職活動をしていた2010年10月の数値は0.56倍。これはつまり、求職者二人に対して、一つの仕事がある、逆に言えば、二人に一人は仕事がない状況です。直近、2013年2月の有効求人倍率は0.85倍とだいぶ回復してきている事が分かります。この数字は単なる経済指標ではなく、求職する人からすれば、労働市場の競争が激しいことを表しています。

しかし、報道などで流される数字だけを見るのではなく、より元データを詳細に見ることで、市場の捉え方も変わってきます。

例えば、この有効求人倍率の分子となる求人件数にはパートも含まれています。自身も含め、やはり安定した身分を望むのならば正社員採用を考えられていると思いますが。正社員だけにしぼった有効求人倍率でみると、2010年当時は、なんと0.35倍です。3人につき、1つくらいしか仕事がなかった状態で、2013年2月ではこの数値も0.54倍までには回復していきていますが、まだまだ1つの仕事を2人で取り合う状況であると言えます。

また、この求人件数もより詳しく見ていくと、元データの方では、産業別や企業規模別(従業員数別)での数字も出ており、2013年2月の新規求人件数でみると、新規求人の9割が300人未満の企業で、100人未満で8割、29人以下で6割強と、所謂中小企業の求人がほとんどです。1000人以上となると1%です。

第3表-1 主要産業別、規模別一般新規求人状況(PDF:126KB)

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安倍首相によるアベノミクスにより、若干、景況感は上向いてきていますが、雇用の調整が行われるのには、時間がかかるため、引き続き、労働市場は厳しい期間が続くものと思われます。また、安倍政権においては、雇用の流動性を高めようとする政策がとられようとしています。これにより、正社員優位のような、競争原理自体も大きく変わる可能性もあります。

とはいえ、不況のこの時期、やはり安定性がある(と考えられる)大企業に就職したいと考える方も多いと思いますが、残念ながら、そこは相当に狭き門であり、単純に有効求人倍率以上の競争の厳しさを想定することが重要です。なぜなら、その狭き門めがけて多くのライバルたちと争っていく必要があるからです。

また、逆に大企業に絞らずに、中小企業や成長段階にあるベンチャーなども視野にいれて転職活動をすることが、早期に職を見つけるという意味ではポイントになります。まずは、この現実を見つめる必要があります。

■完全失業率・失業者数(総務省「労働力調査」)

こちらは総務省による労働力調査からの数字。完全失業率とは、労働力人口に占める完全失業者の割合です。僕の転職活動していた2010年10月分の速報によれば、失業率は5.0%。失業者数は340万人でしたが、直近2013年2月の数字では、完全失業率は4.3%、完全失業者数は284万人と減少傾向にはあるようです。

こちらも単なる経済指標として捉えるのではなく、こうした失業者の中には、働く必要がない人もいるかも知れませんが、ごく少数でしょう。多くは求職活動を行います。つまりは、ライバルとなる人間の数が多いことを表します。

例えば、一般に中年の方の失業が問題になっていますが、最近では、新規大卒者の若年層の失業も大きな問題となっております。年齢別で見ると、多い方から、25~34歳が284万人中74万人を占めています。35~44歳が66万人となっており、働き盛りの若年層、中堅層の失業の多さが分かります。こうした若さを持ちつつ、経験もあるライバルと戦っていかなければならないことを認識しておく必要があります。

こうした、労働市場・転職市場についての情報は自身で、日々こうした統計データや新聞などから入手することも出来ますが、やはり専門の大手転職エージェントなどが持つ情報も有効に活用することが望まれます。また、エージェントに登録せずとも、サイト上にも有用な情報が掲載されていたりもするので、要チェックです。以下、実際に自分も利用したサイトを紹介します。

転職支援サイト

リクナビNEXT

リクルートエージェント

DODA

既に目当ての業界や業種などがある場合は、それらに強いエージェント・転職サイトにも情報が掲載されているので、是非、活用しましょう。自身はコンサルタントだったこともあり以下のようなサイトを活用しました。

コンサルティング業界・ポストコンサルに強いエージェント

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キャリアインキュベーション
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ムービン
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こうした、市場環境を踏まえた上で、自身が市場においてどのようにポジショニングされるのかを考えてみると良いでしょう。こうした、大枠の市場動向を踏まえた上で、自身の経歴・興味関心のある市場について深堀をしていきます。では実際に、自身の場合で見てみます。

2010年当時の状況ですが、労働市場・転職市場の中でもコンサルティング出身者という市場で見てみると、リーマンショック以降、私自身が勤めていたファーム同様に、他の戦略系コンサルティングファームもどこも業績が悪かったようで、採用を抑え、さらに多くの退職者が出ていた模様です。それは、ボストンコンサルティングやマッキンゼー、アクセンチュアなどの大手のコンサルティング会社においても同様です。

これを踏まえて考えると、転職市場において、大手コンサル出身者が多くおり、非常に強力なライバルとなることが考えられます。

また、一方で、求人側で見てみると、今年DeNAやgree、楽天などのネット系ベンチャーは積極採用を行っておりました(これは今も変わらないようですね)。新規事業開発や経営管理など、コンサル経験の活かせる職での求人案件も多くあったものの、こうしたところでは、大手コンサル出身者が採用されていたようです。

このように、求人側つまり企業側の情報と、求職者側つまり自身と同じく仕事を探す人の状況。両者を踏まえて、自身をどの市場に対して、どのように売っていくのかを考えていくことが重要です。先に挙げたように、非常に厳しい市場環境において、なぜ厳しいのか、市場が小さいのか、競争が激しいのか、競合相手はどういう人なのか、を踏まえて戦略を立てないと、勝てない市場で戦って、負けて無駄に凹んだりします

転職活動は確実に勝てる勝負ではないです。あるエージェントいわく、「100社応募出して1社内定をもらえれば良い」と言うくらい、現在は買い手市場であることを考えると、勝つための戦略分析はもちろん、負けた際に、なぜ負けた(不採用)なのかも、しっかりと把握しながら、戦略の修正を行っていくことが必要であると考えます。

競合の多い市場で戦ってませんか?その中で、あなただけの強みはありますか?あなたの市場価値は、戦う市場によって変わります。キャリアチェンジしても同じ年収を望んでませんか?市場を小さく絞り過ぎていませんか?もっと広く市場を捉えてみることは出来ませんか?

30代となると、これまでの経験から、可能性の幅は残念ながら20代のころに比べれば格段に狭くなります。選べる市場も限られてきます。効率的かつ効果的に戦える市場を選び、競合関係を踏まえて戦うことが重要です。

今回は労働市場、転職市場の見方について、考えてみましたが、いかがでしょうか?質問、ご意見などありましたら、是非コメントいただければと思います。

【不況期における転職活動】

はじめに

1.転職市場を知る

1.5 仕事を辞めずに転職活動すべき理由

2.仕事を辞めてまずすること

3.不況期における転職活動を進める上での心構え

4.不況業界からのキャリアチェンジ

5.生活基盤の維持

6.転職活動の方法
6-1.応募

6-2.企業分析

6-3.自己分析

6-4.応募書類(履歴書/職務経歴書/志望動機書)

6-5.面接対策

7.転職活動以外の時間活用

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