【書評】お店づくりの科学を知ってますか?「売り場マーケティングの教科書―なぜかモノが売れる店のつくり方」

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みなさんが買い物される時、自然と手を取ってしまった商品とか、自然と店内を回遊してしまったりとか、ありませんか?実はそれらはお店によって巧妙に仕掛けられていたりします。

小売りの現場に隠されたマーケティングの仕掛けとは

小売の現場では、常に様々な取り組みがなされています。どんなレイアウトであれば、お客様の滞留時間が延びるのか。より商品に接触してもらえるのか。売りたい商品は常にバストライン(ゴールデンゾーン)に陳列したり、物量感を出して安さをアピールしたり、より魅力的に商品が見えるようにするにはどう陳列すればよいのか。

ある商品を右側に陳列するのか、左側に陳列するのかでも売上に大きな影響を与えます。

現在、多くの小売の現場では、セルフ販売が行われており、いかにお客様に商品を見てもらい、手にとってもらい、買ってもらうかが考えられてきました。

本書では、そうした売り場における販売手法のテクニックが紹介されています。

内容は小売業に携わっている人にとっては基本的なものなので、教科書的で目新しいものはないかと思いますが、この考え方というのは実は小売の現場以外にも飲食やホテル、銀行などのサービス業でも使えるものも少なくありません。

これから小売業に従事される方、既に働いているけどお店の基本を学びたい方、また、売りの現場で使われているテクニックを他で活用したい方など、基本的な内容で分かりやすく書かれているのでお勧めです。 この分野に興味のある方は、VMD(Visual Merchandising)という言葉で検索みてください。

本書で紹介されているテクニックは上述の通り、本当に基本的なことで、小売の現場、特にセルフ販売の形態を取るお店では当たり前に使われているものがほとんどです。

が、しかし、意外と、その他の小売の現場ではきちんと使われていない場合が良くあります。また、流通業をしたことがない、メーカーがお店を出した時なども、これらの点が考えられずにお店が作られてしまうことが多々あります。それは、なぜか。

やはり、メーカー視点だと、ブランドや商品の見え方を意識し過ぎてしまうからではないでしょうか。「いかに売るか」を考えたときに、最適な売り場配置、陳列方法を考えることが重要です。それには決して特別なノウハウがあるわけではなく、日頃の消費生活の中で、気づけることが多いのではないでしょうか?

ぜひ、どこでも良いので売り場に行った際に、店舗のレイアウトの意図、商品陳列の意図を考えてみてください。コンビニではなぜ雑誌が窓際に設置されていて、ドリンクが一番奥で、その横にお弁当や総菜で、向いにはパンが売られているのか。お酒の棚の近くにおつまみがあるのか。スーパーの店頭にはなぜ、果物が並べられているのか。導線の最後(レジの近く)に惣菜があるのはなぜなのか。

そこには、全てが意図が隠されています。

小売りの現場以外でも使える、小売り・セルフ販売のノウハウ

また、これらの小売における売りの科学は、その他の業態ではこれまでほとんど考えられてきませんでした。それは、セルフ販売ではなく、販売員を仲介したコンサルティング販売の現場などで顕著です。もちろん、ヒトの力によって売ることが出来るのは、大きな強みではあります。しかし、それをさらに強化するのが、本書のような小売りの現場での売りの科学です。

バランスよく考えられている業態は、アパレルなどでしょうか。アパレルでは、売り売りの態度の店員がいると、すぐにお客様は逃げてしまいますが、店頭をいかに魅力的に見せて、売りたい商品を並べ、手に取ってもらうか、その上で、店員のプッシュをどう行うのか。この連携が巧みに考えられた店舗設計となっていると思います。

以前、コンサルタント時代に自動車販売店や銀行の店頭営業力強化のお手伝いをさせていただいていました。これら、まさにヒトの力で売る営業の現場であっても、こうした小売りのテクニックを活用することで、成果が大きく変わってきます。

スマホなどのテクノロジーの進展で、消費者の購買行動がより明らかに

小売の現場培われた、これらのテクニックは、実際に店頭のレイアウトや商品配置を試行錯誤する中で見出されてきたものですが、昨今テクノロジーの進展もあり、スマートフォンのセンサー(GPSやwifiなどによる位置情報)の把握や、消費者の動きを把握する技術が注目されています。今後ますます、こうした消費者のリアルの現場における購買行動を精緻に把握し、分析し、店頭に活かしていくような取り組みは活発になっていくと考えられます。

でも、そんな技術・テクノロジーをつかなくても、いやむしろ使わずに、自分の店舗のお客様の動きなどは、しっかり一日店頭に立って見ることで、見えてくることがあると思うので、まずは、お客様の動きを把握することから始めるのが良いのではないでしょうか。

お店づくりに興味をもった一冊

店舗の営業力強化は、コンサル時代にも多く携わった案件ではありますが、実は学生時代に巡り合った以下の書籍に、衝撃を受けたのを今でも覚えています。社会学的なアプローチから、消費者の購買行動を分析した書籍ですが、タイトルや表紙からもわかるように、非常に平易に書かれており、店頭のマーケティングを考える上で、非常に参考になる書籍なので、こちらもお勧めです。

photo credit: Kees van Mansom via photopin cc

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