「キャリアは計画出来る」という誤解を解く、新しい時代のキャリアの考え方(「その幸運は偶然ではないんです!」)

キャリア・転職

あなたは5年後、10年後にどうなっていたいか、語ることが出来るか?

あなたは、1年後、どんな仕事をしているでしょうか?もしくは、どんな仕事をしていたいでしょうか?5年後は?10年後はどうでしょうか?

就職活動や転職の面接の際に、こんな質問をされることがあるでしょう。また、古くは小さい時に、「将来は何になりたいのか?」と聞かれたりします。果たして、多くの人が、その時考えた仕事やキャリアを実現出来ているのでしょうか?ある調査によれば、18歳の時に考えていた職業に就いている人は、全体の2%しかいなかったという結果があるようです。

今回、ご紹介する本は「その幸運は偶然ではないんです!」(J.D.クランボルツ/A.S.レヴィン) ダイヤモンド社。

本書は、これまで一般的に良く言われているようなキャリアの考え方である「キャリアは計画出来る・計画すべきものである」といった考えとは真反対のキャリアの考え方です。過去、こちらのブログでも紹介しましたが、「プランドハップンスタンスセオリー(計画的偶発性理論)」のクランボルツ教授が、多くの一般の職業人のインタビューより、この理論について、非常にわかりやすく紹介した内容です。

本書によれば、

キャリアは前もって計画できる、あるいは計画すべきだという考え方は非現実的な話です。キャリアは予測できるものだという迷信に苦しむ人は少なくありません。”唯一無二の正しい仕事”を見つけなくてはならないと考え、それをあらかじめ知る術があるはずだと考えるから、先が見えないことへの不安にうちのめされてしまうのです。

と言います。自身も、この考えに囚われていた時期がありましたが、改めて自身のキャリアを考えると、むしろ、結果的に、この「プランドハップンスタンスセオリー(計画的偶発性理論)」の考え方に合う行動・思考をしてきたと感じています。

この「キャリアは前もって計画できる、あるいは計画すべき」という非現実的な考え方は、一方で、一度夢や目標を定めてしまうと、そこから外れる事が出来ない、という弊害をももたらしてしまっています。本書でも紹介されるケースのように、例えば学生時代に医学部や法学部など、一定の専門性が求められる専攻をした際に、医療関係や、法曹関係の仕事に就かなければいけない、と考えてしまうといった事があります。でも、実際には、学業で学んだり、先輩たちの姿やインターン等を通じて、理想と現実の違いを目の当たりにし、自身に合わないと分かる場合もあるでしょう。それでも、やみくもに、過去に建てた計画や夢・目標にこだわる事で、例え、その当時の夢・目標を達成できたとしても、その人を不幸にしてしまっているケースも多くあるのです。

キャリアは計画出来ないし、夢や目標も状況に応じて変えるべき

本書は、小さな頃からの夢を目指して努力したり、目標に向けて計画を立てる事を決して否定しているわけではありません。そこにこだわり続けてしまい、他の可能性が見えなくなり、結果として不幸になってしまうことを避けましょう、ということを唱えています。

そもそも、この変化の激しい時代、夢や目標とする職業がなくなってしまう事も十分にあり得ますし、その職業につけるかどうかは分かりません。本書で紹介されているケースでは、実際に夢の職業に就いたものの、その現実に触れてみて、それまでとは異なる目標を立てているケースや、夢を周りに宣言したものの、そのハードルの高さと周りからのプレッシャーに耐えられずに、苦しんでしまっているケースもありました。

本書でも

夢はすばらしい。ぜひ、夢を見ることを多いに楽しみ、夢が実現するように努力してください。

と言っています。ただし、

夢が計画どおりに実現しなくても、驚かないでください。予測不可能な出来事があなたの人生を変えてしまうかも知れない-よくも悪くも。夢から醒めたことが最も良い出来事だったと気づいた人もいます。私たちは決してあなたが夢を追求することを妨げはしませんが、その道中では、良く目を開き、耳をすませておくことをお勧めします。チャンスがやってきたときにそれをつかむ準備ができていれば、想定外の出来事があなたをさらによい結果へと導く可能性があります。

ある夢を実現させることに一生懸命になりすぎると、その途中で現れる他のチャンスを無視したり、拒否したりしていまうことがあるということです。

とも言っています。本書では「夢を試してみる、一歩ずつ」ことをお勧めしています。そして、「悪い選択肢には固執せず」に、一度決めた事でも合わないと思ったら辞めてしまう事に罪悪感などを持たないよう勧めています。

結果が見えなくても(小さく)やってみる

「夢を試してみる」ということは、自身が興味を持ったことは、とりあえず手をつけてみるということ。新しい事に積極的に挑戦することを勧めています。もちろん、新しい事なので、失敗する可能性もありますが、失敗を恐れないで、やってみることです。もちろん、取り返しがつかなくなるような大きな失敗は出来ないでしょう、そのため「一歩ずつ」という言葉がついているのです。本書では、失敗に対して、どのように向き合うべきかについても、様々な一般の方のケースを例に、紹介されています。

例えば、リスクを取って、これまでやったことのない仕事でも受けてみる。もちろん、失敗する可能性もあるものの、その過程で自身が学び、結果を出せればそれが評価に繋がり、さらなるキャリアの展開につながったケースや、予期せぬチャンスに備えるといったケースでは、友人の付き合いでいった就職フェアに、自身のこれまでの経歴に合わせて3種の職務経歴書を持参することで、新しい職を得る事が出来たケースが紹介されています。

いずれも、それほど大きなリスクではありませんが、結果が見えなくても、行動してみることで、そのチャンスをうまく活かす事が出来たケースです。

情熱が先か、行動が先か

彼らが強い情熱をもっていたからこそ、成功できたのではないか、と考える方もいるでしょう。本書の紹介する「プランドハップンスタンスセオリー(計画的偶発性理論)」の考え方については、往々にして、一部の著名な成功者を例に挙げて、紹介される場合も多くありますが、本書では、全て一般の人々であり、中には失敗している例も紹介されています。彼らの全員が全員、大いなる夢を持って、行動し、挫折したり、チャンスをつかんでいるという訳ではありません。

よくある幻想として、早い時期に自分の内なる情熱を見出し、唯一絶対の正しい職業選択をすることによって、仕事における満足は得られるという、考え方があります。私たちは、必ずしも行動の前に情熱があるとは考えていません。-情熱は行動の結果として生まれることもあるのです。

当然の事ながら、情熱はないよりはあった方が良いでしょうが、その情熱がどこから出てくるのかと言えば、なんらなかのきっかけがあったはずです。

いろいろな選択肢を模索し、興味をそそることについてもっと学び、どのようにあなたが他者の役に立てるかを考えることを、私たちはあなたに勧めてきました。興味をそそる活動に積極的にかかわっていくことがカギです。しかし、何が自分の興味をそそるのか、どうしたらわかるのでしょうか?何を模索するべきか、どうしたらわかるのでしょうか?何を学ぶべきか、どうしたらわかるのでしょうか?何が重要か、どうしたらわかるのでしょうか?

前もってそれを知る方法はないというのが、これらの質問への答えです。さまざまな活動を試してみることによって見つけられるのです。

自身もそうでしたが、「より間違いのない、効率的なキャリアを描こう」と考えて、キャリア関連の本を手に取っている方も多いと思いますが、様々な研究を行ってきた結果、結局は試してみるしかない、という結論ということです。延々と考え、計画を立てるのではなく、とにかく行動してみることを本書では推奨しています。

こちらのエントリー「プランド・ハップンスタンス・セオリー(Planned Happenstance Theory)とは 自身に当てはめると良く理解できる」でも書きましたが、僕自身のキャリアも偶然の連続でした。システムインテグレーター(SIer)で金融機関向けのシステムの営業を行い、戦略コンサルティングファームで、コンサルタントとして働き、今は結果として、今は大学時代に就きたいと考えていた、広告代理店の職業に就いています。確かに大きな方向性においては、目指していた部分もありますが、実際に2回の転職を行い、社会人経験を積む中で、その目標は形を変えてきています。今なお、この先、どんな仕事をしようか見えてない部分もありますし、ワクワクしているところでもあります。

ある転職活動の面接で、自身のキャリアを説明した際に、面接官の方から、「ここまで来れたのって偶然ですよね?」と言われて、答えに窮したことがありました。その当時は、こうしたキャリアの考え方も知らず、やはり運命やキャリアは自分の力で計画し、コントロールし、切り開くべきものだという固定観念に囚われていたので、確かに、面接官の言う通り「偶然」という影響が、僕の人生において大きな影響を与えているのは否定できませんでしたし、それを前向きに説明する術も当時の僕は持っていませんでした。

今ならば、自信を持って「そうです、偶然です」と答えられるでしょう。そして「その偶然を生み出し、つかむための努力や情報収集、行動を行ってきました。」と言うことが出来ると思います。

本書には、こうした自分のキャリアに対する固定観念を崩してくれるようなワークも豊富に掲載されていますので、単に他人のケースを読むだけではなく、自身のキャリアと向き合いながら読み進めることで、より理解が深まるものと思います。

今のキャリアについて悩んでいる人、行き詰ってしまっている人、親や周りの期待、または過去の自分の期待や約束に縛られてしまっている人は本書を読むと非常に気が楽になるのではないかと思います。

photo credit: paul bica via photopin cc

コメント

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