「人前力」とは、「人前で自分の考えやメッセージをちゃんと伝えられる力」と定義し、今、なぜ人前力が求められているのか、そしてどうすればその人前力を高めることが出来るのか、33のルールにまとめて紹介しています。
本書の著者、山本秀行氏はパーソナルブランディングのコンサルタントとしても活動されており、本書はそうしたパーソナルブランドの構築、発信という視点において「人前力」の重要性を説いています。そのため、単純なプレゼンのスキルや、話し方ノウハウではなく、日頃の心がけや、コミュニケーションにおけるスタンスなど、非常に平易な表現で語られているので、すぐに取り組めるものがほとんどです。
例えば、自身が最も参考になったルールは
ルール3:人前力がパーソナルブランドを進化させる。
パーソナルブランディングについては、以前から考えていたものの、ブランドの核となるコアの発見について滞っていました。ブランドはあくまでも「他者評価」という考えに立ち、積極的に人前に立つことで、他者評価を受け、それがパーソナルブランド進化に繋がるという考え方は参考になりました。
ルール24.プレゼンは迫力である。
これは著者が以前広告代理店にてクリエイティブディレクターとしてプレゼンテーターとして、プレゼンの事前準備をしている際に、上司に言われた言葉。その意図は、「誰よりも考え抜いた自信」という迫力が伝えるというもの。これは、自身も前職の経営コンサルタントとしてプレゼンをする際にも実感しました。
本書で書かれていることは、特に目新しいことではないかも知れません。山本氏のセミナーに参加する機会があったのですが、「分かることと出来ることは違う」とセミナーの始めに念を押されました。
本書の内容についても分かっていても出来ていないことがあるのではないでしょうか。その意味でも自分でも出来ていなかった点などを確認する上で読んでみてはいかがでしょうか。人前に立ち話すのが苦手な人や、プレゼンをする機会が多い方などにおすすめです。
人前で話すことが楽になる 人前力 33のルール | |
山本 秀行
日本経済新聞出版社 2010-05-26 おすすめ平均 |
近年、コミュニケーション能力について高く求められることが多くなりました。それは、経営者や営業マンだけでなく、政治家はもちろん、官僚にも説明責任が求められますし、コツコツと研究開発を行っているような研究員でも、研究成果について発表する場、予算獲得のための説得場など、ありとあらゆる場面でコミュニケーションが求められています。
以前から、こういう場あったように思いますが、それほど強く求められてこなかったのは、同一の文化、共通の価値観、知識を持つ人間同士で仕事が簡潔していたからではないかと思います。
ビジネスの国際化・グローバル化に伴い、人材も多様化しています。さまざまなライフスタイルや価値観を持つ人が増えてくる中で、しっかり説明をして、理解をしてもらい、共感を得て物事を進めていく上での協力や了解を得ていく必要が出てきました。
本書の「人前力」はまさにそうしたコミュニケーションの場を乗り切り、仕事を生活を円滑に進めていく上での重要なポイントが含まれています。また、近年パーソナルブランドという言葉も一般化してきましたが、まだまだ戦略的に実行できている人は少ないのではないでしょうか。
良いブランド、好ましいブランドというのは意図しないと創り上げられないものですが、マーケティングの世界でもいわれるように、「ブランドは顧客の頭の中に作られる」という言葉通り、あなたのパーソナルブランドも意図せずとも、勝手に相手の頭の中に創り上げられている可能性が高いです。
常日頃からイライラして周りに当り散らす人、一方で、毎朝元気に挨拶をする人。こうしたコミュニケーションひとつひとつがすべてパーソナルブランドの構築につながっていきます。「人前力」というと、人前に出てスピーチやプレゼンを行うためだけの能力のように思われますが、家庭も含めれば常にあなたはあなた以外という人の前にいるわけで、コミュニケーションとは、発する言葉だけでなく、言動や身につけるもの、相手に与える情報すべてがコミュニケーションになります。
そう考えてみると、この「人前力」。本書では非常にわかり易く語れていますが、とても重要な能力である気づかされます。「あなたのパーソナルブランドのブランドコミュニケーション」と言えるでしょう。ブランドのファクト(事実)、中身を研くのも重要ではありますが、コミュニケーションを通じて昇華されていくものでもあります。
本書を読んで、パーソナルブランド強化の必要性・重要性に改めて気づかされた次第です
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