先日、似たようなタイトルな記事を投稿しましたが、関連する書籍の紹介です。
なぜ我々は働くのか
本書は、「仕事とは何か」「なぜ我々は働くのか」を考える全10回のシリーズトークを書籍化したものです。
第一話は「現実に流されないための錨」としての「思想」について。これは上述で紹介した書籍でもより深堀されています。第二話が、実は本書で自身がもっとも影響を受け、いまだにその考えを信じている内容で、「仕事の報酬とは何か」を問うた内容です。
その他、「目標」とは何のためにあるのか、「顧客」はあなたにとってどういった存在なのか。よく言われる「共感」する事とは仕事においてどういった真の意味があるのか。人間力を高める、人同士の「格闘」や「地位」。長い職業人生において、支えとなる「友人」「仲間」とはどういった存在なのか。最後に、仕事を通じて、あなたが残せる未来とは何なのか。
田坂氏の著書全般を通じて言えることですが、「問い」と「考え方」を交互に繰り返しながら、考えを広げ、深めていく構成となっており、すっと腹に落ちてきます。
仕事の報酬とは何か
上述で、自身がもっとも影響を受けた箇所について、少し紹介します。みなさんは「仕事の報酬とは何か」と問われた時、何と答えるでしょうか?
「給料」
「仕事の報酬とは給料である。」これも決して間違いではないでしょう。しかし、本書では、さらに仕事に真剣に取り組んでいく中で見えてくる世界があると言います。それは、
「仕事の報酬は、能力である」
という世界。仕事を通じて、これまでできなかったことが、出来るようになる。人間として、何か出来るようになるというのは、喜びになるでしょう。さらに、能力を高めていくと見えてくる世界があると言います。それが、
「仕事の報酬は、仕事である」
という考え方。能力を高め、仕事上で成果を上げ、実績を上げることで、自身のやりたい仕事をする機会、やりがいのある仕事を出来る機会を得られるようになってくるでしょう。そうして得られた仕事が報酬であると、言います。さらに、その先の世界には
「仕事の報酬は、成長である」
という世界。これは、仕事上の「能力」における成長ではなく、人間的な成長を指します。この、人間としての成長は決して失われることのない報酬であり、仕事の報酬を見誤らない事で重要であると言います。
では、人間としての成長とは何か。その成長の鏡となる顧客とは何か。と本書では、さらに思考を深めていきます。
自身は学生時代から、特に強くこれをやりたい、という明確なものがあったわけではないですが、おそらく学生時代に描いていた夢を、泣く泣くあきらめてサラリーマンになった方は多いのではないでしょうか。そうした時、例えば趣味は趣味として続け、その生活を養うための「給料」という報酬を目当てに仕事をしている、という方もいるでしょう。
しかし、真剣に目の前の仕事に向き合う事で、上述のような新しい世界が見えてくるのではないかと思いますし、自身もまた、仕事を通じてそう強く感じています。
本書の各話は、それ一つとっても本になりそうな深いテーマを扱っていますが、それ故に、どこを切り取っても、考えさせられるものとなっており、仕事人にとっての永遠の課題に対する、素晴らしい問いとなっています。
新社会人はもちろん、入社3年目~10年目くらいの若手から中堅の方にとっては、改めて、自分の仕事に対するスタンスを考える良い機会を与えてくれる本だと思います。また、ここでは紹介しませんでしたが、マネジメント層の方にとっても、マネジメントとしての権限・責任とは何かを考えさせられる内容となっており、お勧めです。
心の支え、目標を見失わせない「友人」の存在
仕事を通じた「成長」を経る過程で、さまざまな困難や障害が横たわっています。こうした困難にぶち当たった時、もちろん、夢や目標を改めて思い直す事で、モチベーションを維持することも出来るかも知れません。そして、もう一つ、そんな、折れそうな心を支えてくれるのが「友人」の存在であると、著者は言います。
それは、つらいときに愚痴を聞いてくれたり、アドバイスをくれるような友人でもなければ、叱咤激励をしてくれる友人でもありません。もちろん、そうした友人も支えにはなってくれるでしょうが、本書ではまた、違う意味での支えを指しています。本書では著者自身の実体験エピソードも紹介した上で、以下のように意味づけています。
何十年もの長き歳月を別々の道を歩み、そして互いに顔を合わせることがなくとも、互いに言葉を交わすことがなくとも、無言の励ましあいを送りあうことのできる友人。
ぼく自身、決して人付き合いの上手い方でもなければ、社交的な人間ではありませんが、勝手に、一方的に上記のような友人と位置付けている友人が数人います。
高校時代、大学・留学時代、大学卒業後に入社した最初の会社の人間、インターネットで知り合った人間など、出会いこそ様々で、結果、今は別々の道々に進む方々ばかりで、会うのも年に1回、2回程度、電話で話す事もほとんどないですが、いつも心のどこかで、「きっと、彼らは彼らの目指すべき道を歩み続けているだろう」と、だからこそ、自分も決して負けられない、と歩みを止めてはならぬ、と思うのです。
とは、言いつつも、年に1回でも彼らに会うと、彼らの成長に驚かされ、刺激を受ける一方で、果たして自分は彼らに誇れるような1年間を過ごせたのかと、自己嫌悪に陥ることがしばしばです。そんな、情けない自分ではありますが、長年付き合い続けてくれる友人に感謝です。
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