【書評】「お金の流れが変わった」大前研一(PHP研究所)

書評

「R+(レビュープラス)」様よりご献本いただいた本の紹介です。

本書は、大前研一氏による2010年12月時点における最新の政策提言と言えます。リーマンショック以降のお金の流れの変化、ドバイショックからギリシア危機などを踏まえて、世の中のお金の流れがどう変わってきているのかを、グローバルな視点で解説。アメリカや中国の脅威や影響、ここ最近の中国、ロシアとの領土・外交問題も踏まえて、日本がどのような対策をとるべきかといった具体的な政策提言にまで言及しています。

本書のキーワードである「ホームレス・マネー」。

「ホームレス・マネー」とは、”投資先を探して世界をさまよっている、不要不急で、無責任きわまりないお金”のこと。各国において、国内への投資先を失い、世界に出て、過剰な流動性を持ったお金であり、約4000兆円近い金額が動いていると言います。

この「ホームレス・マネー」が世界各国でバブルを作り出していると言います。儲ける目があれば、そこに一気に集中して投資をし、価格が高騰する。そして、一転、危険性を感じれば一気にお金を引き上げる。

こうしたお金の流れを有効に利用・活用し、国を反映させることも出来れば、食い物にされてつぶされてしまう国も出てきます。国の信用力や経済力の強さが現れる通貨のパワーバランスにも大きな影響を与え、米ドルやユーロの位置づけも、今後大いに変わってくるものと、著者は予測しています。

こうしたパラダイムシフトを受けて、日本の取るべき経済政策とは何か、また、新興国市場はどのようにこの「ホームレス・マネー」を活用していくのか。

マクロ経済、政策提言といった非常に大きな枠組みの話しではありますが、ビジネスの世界においては、非常に大きな潮流・トレンドであり、この流れを表層的ではなく、なぜかこうした事態になっているのかを理解するうえでもとても参考になります。

お金の流れが変わった! (PHP新書)
お金の流れが変わった! (PHP新書) 大前 研一

PHP研究所 2010-12-16
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かなり以前より経済のグローバル化の流れは進んではいましたが、最近、仕事上でも実感します。その上でも、やはり世界経済の潮流やトレンドをしっかりと把握しておくことが重要です。お金の流れを理解することは、今後ビジネスが活性化する先を把握することに繋がります。

一見、こうしたマクロ経済や政策提言などは実務的に少し遠い世界のような気もしますが、こうしたビジネスのルールを理解せずに新興国でのビジネスや投資を行おうとしても、成功確率を高めることは難しいのではないでしょうか。日本経済の縮小がほぼ確定的な未来として見えてきている中で、いかにグローバルでのビジネスを展開するかは、どのような業界においても必須なのではないでしょうか。

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