新年度になりました。新入社員の姿を初々しく感じてしまう程に、自分も社会人として13年目を迎えました。齢も30後半を迎え、体もだいぶガタがきており、最近週1くらいでジムに通ってヨガなどに新たに取り組み始めたりしています。
ジムは市ヶ谷にあり、外堀通り沿いは、既に葉桜にはなってしまっていますが、都内有数の桜の名所。そんな桜を眺めていたら、ふと自身の新入社員時代を思い出しました。
社会人としての「原点」を振り返る
大学卒業後、最初に入社したのは、システム会社。そこで営業として採用されました。当時は半外資ではありましたが、非常に日本的な会社で、新入社員研修も3~4ヶ月間かけてじっくり育ててくれる、そんな優しい会社でした。
システム会社ということもあり、営業であっても、システムの知識や簡単なプログラミングなどの研修もありましたが、営業ならでは研修として、「飛び込み営業研修」がありました。内容は単純で、Office系ソフトの操作を学べるCD-ROM教材(数千円)を、飛び込み営業で売ってくる、という泥臭いもの。今考えると、自社にとっても結構リスクのある研修だったと思いますし、お客様となる企業にとっても、右も左も分からないような新入社員を押し付けられて、迷惑な話だとは思いますが、個人的に最も記憶に残っている研修でした。
さすがに新人の営業が重複して訪問しては、さらにお客様にも迷惑がかかるので、個々人が特定のエリアに分かれて、2週間くらいかけて営業に行きます。その時の僕の担当エリアが市ヶ谷・麹町エリアでした。幸か不幸か中小企業のオフィスも多く、アプローチ先はたくさんありました。
研修とは言うものの、売上目標があるわけでも、毎日営業報告する訳でもなく、成果よりもプロセスが重要だったようですが、トラッキングされる仕組みもないため、中にはサボる人間もいました。ちょうど梅雨時期も重なって、雨も多く、外回りで歩き回るのはそれなりに面倒でした。僕も決して負けん気が強いわけでもなく、飛び込み営業なんてしたこともなければ、むしろ人と話すのも苦手な部類でしたので、決して乗り気ではありませんでした。
ただ、研修という名目もあり、失敗しても許される(と勝手に解釈)と思い、なかなか出来ない経験でもあるので、積極的に回りました。もちろん、受付(というか、大抵はインターホンしかないような小さなオフィスが多かったですが)での門前払いされることが多いですし、実際担当の方とお会いできても、まともに対応出来ずにお叱りを受けたり、心折れそうにもなることも多かったです。ただ、ある意味、社会勉強を行うようなスタンスで、それぞれの企業がどんな対応をするのかを観察して楽しめる余裕もありました。そんな事もあり、数打ちゃ当たる、というか、数十件は回ったような気がしますが、なんとか数件の受注を獲得すること出来ました。
そんな中で、ご購入いただけたお客様から言われた言葉が今でも心に残っています。それは、
「決して商品が良いと思ったわけではない。君だから買おうと思ったんだ」と。
飛び込み営業ですので、当然、お客様との関係などまったくありません。突然訪問し、たどたどしい商品の説明を聞いていただきました。恐らく、そのお客様はこれが新入社員研修の一貫であることをなんとなく察していたのだと思います。正直、そのCD-ROM教材はお世辞にも特徴のある商品ではなく、市販のものでも良いものがいっぱいありましたが、そんな中で、研修にお付き合いいただき、商品を買ってくれた、自身の社会人としての最初のお客様でした。
初回訪問時、購入を検討するから見積が欲しいと言われ、見積を作成し、翌日訪問し提出しました(まだメールなども使えなかったので)。また、商品に関する質問事項もあったので、回答も含めて訪問し回答させていただきました。至ってごく普通の対応ではありますが、そうした誠意のある対応を評価いただいたとのことでした。
当たり前ではありますが、お客様の要望に対して誠心誠意対応していく、という愚直な営業スタイルは、これしか出来ないというのもありますが、今でもあまり変わりません。2回の転職を経て、現在3社目、いろいろな仕事の経験を積んできましたが、未だにこの新入社員研修の経験は鮮烈に想い出に残ってます。営業の仕事の醍醐味の一端を感じられた経験でした。
「原点」を振り返り、「今」を捉えると、「先」が見えてくる。
昔を単に懐かしむだけではなく、こうした「原点」を一度見直してみて、そして、今までの道のりを振り返ってみると、これからの道筋というのもなんとなく見えてきたりします。日々目の前の仕事に取り組んでいると、なかなか後ろを振り返る事もないですが、新年度、新生活を迎える中、社会人歴がある程度経った方も、今一度振り返ってみるのも悪くないです。
これまでの経験の中で、どんな時に、どんな事に、喜びを感じられたのか、楽しかったのか、それを振り返ると、自身が、何を大事にしているのか、価値観というものが朧げながら見えてきます。家の中を整理する機会があり、本を整理してたのですが、昔買い集めた、興味のある領域の書籍などがたくさん出てきました。5年前、10年前、15年前、自分がどんなものに興味を持って、何を目指して、何を学ぼうとしていたのか、改めて思い出しました。
最近、目の前の仕事に追われて、過去も、未来もあまり考えていませんでしたが、こうした時間を持つことの重要性を改めて感じた今日この頃です。
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