自身のアンテナがそちらに向いているせいなのか、もしくは時代として求められてきているのか、キャリアをテーマにした書籍・雑誌が良く目につきます。
今月の2013年5月号のハーバード・ビジネス・レビューでは「最高のキャリアを目指す」と題して、これからのキャリアプランニングの考え方や、そもそも、これからの働き方について示唆に富んだ論文が掲載されています。
2025年の働き方を、様々な角度から考察し、新たな働き方を考えさせられた「WORK SHIFT(ワーク・シフト)」の著者リンダ・グラットン教授のインタビューや、「採用基準」で話題になった、元マッキンゼーで現在キャリア形成コンサルタントの伊賀泰代氏による記事など、普段のハーバード・ビジネス・レビューほどお堅い内容ではなく、経営に限らず、ビジネスマンにとって共通する課題でもあるので、大変読みやすい内容になっています。
本稿含め、いくつかの記事について、紹介していきたいと思います。
キャリアの成功とは何か キャリア形成コンサルタント 伊賀泰代氏
伊賀氏は上述の通り、最近話題になった書籍「採用基準」の著者。元マッキンゼーで人材育成・採用マネジャーなどを行ってきた方です。
本記事では「キャリアの成功とは何か」と題して、成功に必要な3つの要素を挙げています。バブル崩壊以降、企業・組織での昇進がままならなくなったのも含む、個人のキャリア観が多様化する中、会社で昇進すること、収入が増える事、だけがキャリアの成功と考える人も少なくなってきました。
ただ、一方で、何をもって成功として良いのかが、分からなくなってきてしまっている人も多く、著者もそうした相談を、若手はもちろん、30・40才の一定のキャリアを積んだ方からも受けると言います。
キャリアの成功における3つのステップ
著者はキャリアの成功にあたって、次の3つのステップが必要であると言います。
STEP1:自分が職業人生で達成したい使命がある
STEP2:その使命の達成を自分の職業とできる
STPE3:職業人生におけるコントロールを自分で握る。
いたって当然と言えば、当然で、極論というか、行きつく先はこのような条件にならざるを得ないのでしょう。この考え方自体はなんら目新しいものではないでしょうが、「一体全体何が自身のキャリアにとって成功なのか」を漫然と模索し続けるのではなく、こうした結論に帰結するということはひとつ有意義ではないかと思います。一つ一つ紹介させていただきます。
STEP1:自分が職業人生で達成したい使命がある
「当然と言えば当然」と書かせていただきましたが、実はその「当然」の第一ステップで躓く方がほとんどではないでしょうか?「成功」の定義が、自身の望む姿であるとするならば、その自身の望む姿が見つからない状態で、いかに成功することが出来るしょうか。
とは言え、生活の糧など、必要に迫られて就職したり、やむを得ぬ事情で今の仕事を選んで、深く考えることなく働き続けている方も多いと思いますし、自身も社会人歴10年目にして、未だに模索しています。
ただ、著者も言っているのは、やはり社会に出る学生時代の段階で見える使命と、働き始めて見えてくる使命というのは異なっていて当然であり、変わる事は否定していません。また特に若い段階では、見えてこないのも当然と言えます。
自分が何に関わりたいのか、どんな働き方や仕事に心躍るのかという条件を突き詰めていくことで、ある分野で突き詰めたい使命が見つかると言います。
まずは、その使命を見つけることがキャリア形成の第一歩。
STEP2:その使命の達成を自分の職業とできる
音楽や芸術活動などを通じて、自分の表現を追求していきたいという使命に燃えていたとしても、やはりそれを職業として、収入を得る手段とする<マネタイズ>が出来ないと、キャリア形成にはつなげられないでしょう。著者はここで日本における問題について挙げています。
それは「雇ってもらう以外に、収入を得る方法がないと思い込んでいる人が多すぎる」ということです。「やりたい事があるので、どこに就職すればよいか」という発想ではなく、「どうすれば、それによって自分が食べていけるようになるか」という発想が必要であると言います。そのためには、
使命を職業化するために必要なのは、社会で満たされていないニーズを充足する方法を設計し、収益化するためのマネタイズの仕組みを考えることだ。
もちろん、これも簡単な事ではないですし、今の仕事をいきなり辞めて起業することを進めているわけでもありません。まず、最初に必要なのは「価値」であり、市場や顧客から強く求められる価値を生み出すことが出来れば、マネタイズの方法は後からついてくると言います。
STEP3:職業人生におけるコントロールを握る
たとえ、自らの使命を実現できる職業に就けたとしても、自主性を発揮出来なければ、それはやはり”働かされている”状況に過ぎず、コントロールを自ら握れることが重要だと言います。
それは、例えば、下積みとして、地位が弱いがために仕事を選べず、望まない仕事をやらざるを得なかったり、士業などの自立している職業でも、自身のプライベートを犠牲にしている場合、フリーランスや自営業であっても、実態は土日も有給休暇もない、無休労働者だとしたら、それが果たして成功と言えるのか、どうかということ。
先日のポストでも紹介した「ワーキング・カップル」のように、共働きが当たり前の時代において、ワークライフバランスも含めて、キャリアの成功における使命を考えておく必要があり、そのためにも自分の人生のコントロールを握っておく事が重要であると言います。
雑感:何事も目標が大事だということと、マネタイズを諦めないということ
自己啓発系の本では、当たり前に良く言われることで、何をするにつけても、目標が大事だということ。本記事では、「使命」という言葉でしたが、同様です。著者曰く、変わることが当たり前というのは、自分も強く感じるところがあります。
当初は、新卒後、システム系の会社の営業として働き始め、その中で何のために働いているのか、というのは結構自問自答していました。職場や仕事内容自体に不満が強くあったわけではないですが、当時の担当していたクライアントが、金融系で、自社の扱う商材がその基幹系システムということで、バックエンドもバックエンドな分野を担当していました。
営業としてのやりがいみたいなものはあるにはありましたが、果たして、自身が売るべきものはこれで良いのか、間接的にではありますが、経済を支える金融機関を、さらに裏から支えるという社会的な使命はありつつも、それが自身の達成したい使命なのか、疑問に持ってしまったことも、転職した理由の一つではあります。
その後、戦略コンサルとして自身の興味関心のある仕事に就く中で、経営・事業戦略やマーケティング戦略の立案にやりがいを感じつつも、その実行段階やその現場で働く人達のモチベーション、経営者によるマネジメントの部分などに、次第に興味関心が移りました、自身の転職の経験も踏まえつつ、使命についてキャリア形成に関するものが比較的自身の中で大きな比重を占めつつありました。
ただ、ここでも曖昧に濁して書いているように、現時点では明確ではないのも確かで、今現在、広告代理店に勤めている中で、またこれはこれは面白い仕事で、新たな使命感を感じさせる仕事でもあり、悩ましいところです。
単なる飽き性だと思われるかも知れませんし、自分でもそんな気もするのですが、その時その時の仕事に携わって、懸命にやっていると、そうなってしまうのも必然なのではないかと最近思うようになってきました。
また、マネタイズに関する点については、著者の言う通り、いまある枠組みの中で、自身のやりたいことを実現しようとしてしまい、あきらめてしまっている方も多いと思うので、雇われる以外の実現方法については、あきらめずに考えるべきだと思います。
上記に挙げた、キャリア形成に関する使命については、実はマネタイズ方法が思いつかずに、いったんは諦めてしまった部分もありましたが、もう少し動きながら、考えてみたいと改めて思いました。
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