昨年から「ビッグデータ」というバズワードを頻繁に耳にしますが、バズワードという言葉通り、その言葉の定義や、いまいちどう役立つのか、活用すべきなのか、曖昧なまま、言葉だけが独り歩きしています。
ハーバードビジネスレビュー(HBR)2月号では、そのビッグデータについて、経営としての活用、活用している企業事例、活用するための方法について論文が掲載されています。
まずは概論として、MITの教授による「ビッグデータで経営はどう変わるか」
「ビッグデータで経営はどう変わるか」
「計測の対象にならないものは、マネジメントできない」という、W・エドワーズ・デミングとピーター・ドラッカーの残した言葉がありますが、デジタル化、データ量の増加により、計測し、活用できる情報が増えることにより、Amazonを始め、経営や競争環境に与える影響は非常に大きなものになっていると言います。
そもそも「ビッグデータ」は、これまでのデータ分析と何が違うのか。本記事では、データの「量」、処理するデータの「鮮度」、そしてデータの「多様性」の3点をその特徴として挙げています。これは、ITの進展、SNSやスマートフォンなどのデジタル化によるものが大きいでしょう。
そして、研究成果として、データを重視している企業が、そうでない企業に比べて業績が良いという点も検証し、具体的にビッグデータを活用している事例を紹介しています。
ビッグデータの活用事例と活用するために必要なマネジメント変革
一つは航空機の到着時間の予測精度の向上。気象条件や、運行スケジュール、レーダー基地から収集される膨大なデータを活用し、予測精度を向上された事例。
もう一つは米小売り大手シアーズの販売促進施策の迅速化とパーソナル化。顧客、製品情報、販売促進関する情報を、従来はまとめて、分析し処理するのに時間がかかって、タイミングを逸していたものを、ビッグデータ関連の技術と手法としてHadoop(ハドゥープ)とサーバーを導入し、それまでおよそ8週間かかっていた販促の準備を1週間に短縮化し、迅速性と正確性の向上に寄与させている。
こうしたビッグデータ活用にあたって、マネジメントに求められる変革要素として、次の5つを挙げ解説しています。「リーダーシップ」「人材マネジメント」「テクノロジー」「意思決定」「企業文化」。
ビッグデータ活用は一見、テクノロジー面ばかりが強調されますが、上記、経営マターの多様な面でも、変革が求められる点が強調されています。
経営=マネジメントのベースがビッグデータになることよる変革の必要性
それは、本記事の冒頭に出てきたドラッカーらの言葉「計測の対象にならないものは、マネジメントできない」に起因していると思われます。経営=マネジメント、マネジメントとは意思決定を行い、実行することです。その元となる環境がビッグデータに変わることで、誰が、いつ、どのように意思決定を行うのか、企業活動全般に全てに変革が求められるということなのかと思います。
ビッグデータ活用に向けたハードル
ここからは私見ですが、ビッグデータ活用に向けて変革を行う際のハードルがいくつかあると考えています。1つはそもそもですが、「データ統合のハードル」です。ビッグデータ用のソフトウェアなどもあるのでしょうが、やはり分散するデータを統合しないことには分析もままならないでしょう。
しかし、データ形式の違いや、そもそもアナログの情報しかなかったり、各担当者ベースで管理しているものがあったりと、せっかく多様性のあるデータも、その多様性故に合わせて分析するのはひどく困難でしょう。それらのデータを集約・管理するには、一時的にもかなりのコストがかかる上で、オペレーション上でも変革を伴うため、導入し、実際に運用されるまでにはかなりの負荷が想定されます。
続いてのハードルは「投資コストに見合う成果と社内説得材料の獲得」です。
上記の一時的な投資コストはもちろん、仕事のやり方から変革するとなると、それ相応の社内説得が求められます。
ビッグデータ活用も一定の仮説を元に、導入を試みようとするでしょうが、その仮説を検証するにはビッグデータが必要だったり、一部から導入するのが難しいように思います。意思決定にあたって、情報は多ければ多い方が、そして、それを適切に分析出来るツールがあれば、より正しいと思われる意思決定に辿り着けるような感覚はあるでしょうが、それが成果にどの程度結びつくのかを明示するのは非常に困難です。
その意味でも本HBRの記事にあるような、トップマネジメントからの変革、企業風土など根本的な変革が同時に求められるのでしょう。
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