【書評】「ある日、ボスがガイジンになったら!? -英語を習うより、コミュニケーションを学べ-」関橋 英作

キャリア・転職

今ではそれほど話題にもならなくなりましたが、日本企業が外資企業に買収されて、いきなり上司が外国人になって、英会話に通う人が増えた、なんて事がありました。日本企業であっても、海外と仕事をし、外国人留学生を積極的に採用している企業も多く、外国人と働く機会は、ますます増えています。そうした時、まずは英語力を身に付けようと思うものですが、英語力だけを身に付けても、日本人とは異なるスタンス、価値観で働く外国人との間では、コミュニケーションギャップが生まれてしまいます。

外国人のボスと効率よく働くコミュニケーションスタイル11の法則

本書は、英語の勉強方法ではなく、外国人、本書では、アメリカ人でしょうか、海外のビジネスマンが持つ考え方、価値観、仕事に対するスタンスを、外資系の広告代理店で働いていた著者の実体験を踏まえて紹介しています。外国人とのコミュニケーションを円滑にするには、外国人の持つコミュニケーションスタイルを理解する必要があります。本書では、それを11の法則にまとめています。

  1. オープンの法則
    隠し事をせずに、相手によって態度を変えないこと。上下関係も必要以上に気にせずに、ストレートに。
  2. ハッピーの法則
    仕事を楽しみ、仕事の中にもユーモアを交え、情熱を持って仕事をする。そして、笑顔を大切に。
  3. シンプルの法則
    1番目に伝えたいことは何かを考える。
  4. ポジティブの法則
    できるわけがない、やるだけ無駄、と思わず、できると信じて仕事に取り組むこと。時には自分や、周りまでもモチベートしながら。リスクも時には取りに行く覚悟で。
  5. リフレッシュの法則
    国を離れて仕事をする外国人は、良く長期休暇を取ってhome leaveし家族と会うことでリフレッシュしてきます。常に気を張って仕事をするのでなく、適度に休みをとって、自分をリフレッシュさせることが、次の仕事にもつながる。
  6. リウォードの法則
    日本人は褒めるのが苦手。一方外国人は軽く褒める。相手の仕事を認めることで、さらに仕事がしやすくなります。褒める、感謝する。見た目を褒めるなんてことも、潤滑油として働きます。
  7. イノベーションの法則
    現状に満足せず、変化を作り出していくこと。新しいアイデアや考え方も積極的に取り入れる。
  8. クリアの法則
    日本人にありがちな、曖昧さ、先送りを避ける。優先順位も明確にする。
  9. ビジョンの法則
    ただ、闇雲に頑張るのではなく、目指すゴールを明確にし、そこへの道筋も示す。短期的な視野だけでなく、大局的な目標を持つこと。
  10. チームの法則
    チームワークは日本人の方が得意そうですが、ここでいうチームワークは日本的な和を重んじるようなものではなく、一つの目標に向かって個人個人が、力を出し切ること、またはそうした環境を作り出すこと。
  11. クリエイティブの法則
    常識に捕らわれず、自由な視点を持つこと。クリエイティブは特別なことではなく、ちょっとひねりを加えてみる。

いずれも、決して外国人に限ったことではなく、日本人でも仕事がデキる人は心掛けていそうな法則です。ただ、比較的日本人が苦手なこと、あまり価値観として持ってないようなことが挙げられています。基本、外国人のポジティブな面だけを捉えており、決してこんな良い所ばかりではないんでしょうが、相手の価値観を理解し、尊重することで仕事がしやすくなるのは事実でしょう。

本書は外国人のクライアントを担当する方、外国人上司がいる方、これから外資系企業に就職、転職される方など、一緒に働く人間を理解するヒントになるのではないでしょうか。

外国人上司や外国人の同僚、クライアントと一緒に仕事をすることになる可能性も決して低くないので、参考までに手に取った本ですが、実際に、一部業務で外国人のクライアントに対するプレゼンなどをする機会もありますが、英語力がなく伝えられないこともさることながら、コミュニケーションスタイルの違いに圧倒的に苦労します。

上述の通り、外国人の非常にポジティブな面にフォーカスして書かれているので、外国人はみんなそんなに仕事がデキるのかと思ってしまいがちですが、ネガティブな面を見て対応するよりは良いと思います。でも、そうした異文化の人間と仕事をする事を、ダイバーシティだなんだと、無闇に礼賛する風潮がありますが、マイナス面も決してないわけではないので、その点も言及してるとより実践的な内容になった気もします。

外国人ボスに限らず多様なボス・同僚と働くということ

また本書ではアメリカ人を外国人として捉えて書かれていますが、アメリカがグローバルでのスタンダードという訳でもないですし、アジア圏の外国人だとまた違ったアドバイスになるのでしょう。実際に、グローバルクライアントなどを相手にすることになると、出身国によってコミュニケーションスタイルを変える事は非常に重要になってきます。プレゼンの勝敗もこのあたりを理解しているか否かで大きく変わるので、単に英語が話せるというだけでは通じないでしょう。

外国人であるか否かに関わらず、本書で書かれている仕事上のスタンスは大切なことだと思います。日本人が苦手としがちなポイントが取り上げられているので、これまでの自分の考え方に捕らわれないよう、新たな視点を加える意味で本書を読んでも良いかと思います。

コメント